この記事の要点(1分で読める版)
- Rocket Labは打ち上げ(Electron)と衛星・部品製造(スペースシステム)を同一企業内でつなぎ、ミッション単位で「成立させる側」に寄る企業だ。
- 主要な収益源は打ち上げ料金と宇宙機(衛星・部品・国防向け衛星システム)の製造納入で、直近は国防のプライム受注がストーリーの重心になっている。
- 長期ではFY売上が高成長(5年CAGR約+55.2%)だが、EPSとFCFはマイナスが続き、利益の型が未完成のためリンチ分類は「分類保留」が整合的だ。
- 主なリスクは固定価格・高要求の国防量産での遅延や品質問題、専用小型打ち上げの代替(相乗り)による収益性圧力、統合モデルの同質化、利払い余力の弱さ、組織負荷の増大だ。
- 特に注視すべき変数は国防衛星量産のマイルストーン達成と原価の予見性、打ち上げの複数回契約が供給制約や遅延連鎖を起こしていないか、売上成長が利益・FCF改善に追随しているか、Neutronの立ち上げ進捗だ。
※ 本レポートは 2026-01-07 時点のデータに基づいて作成されています。
Rocket Labは何をしている会社か(中学生向け)
Rocket Lab(RKLB)は「衛星を宇宙へ運ぶロケット会社」として知られますが、実態はそれだけではありません。打ち上げに加えて、衛星そのものや衛星部品、さらに国防向けの“衛星システム一式”まで手がける、宇宙産業の中でも守備範囲が広い会社です。
やっていることを大づかみに言うと、次の3つを同じ会社の中でつなげている点が特徴です。
- ロケットで衛星を宇宙へ運ぶ(打ち上げ)
- 宇宙で使う機械を作る(衛星・衛星部品)
- 国防などの高要求案件で「ミッションを成立させる側」に寄る(衛星システムのプライム受注)
材料記事のたとえ話で言えば、Rocket Labは「引っ越し屋(打ち上げ)」をしながら「家具工場(衛星・部品)」も持ち、さらに「引っ越し先の部屋づくり(国防向けシステム)」までまとめて請け負い始めた会社です。
顧客は誰か:民間・政府・国防の3本立て
Rocket Labの顧客は大きく3種類です。
- 民間企業:地球観測や通信など、衛星を運用する企業(コンステレーション事業者を含む)
- 政府・宇宙機関:NASAなど
- 国防関連:監視・通信・ミサイル警戒など、安全保障目的で衛星が必要な組織
特に最近は「国防向けの衛星をまとめて作る(プライムで受注する)」という文脈が目立ちます。2025年12月には、ミサイル警戒・追跡向けの衛星を18機製造する大型契約が示されています。
どうやって儲けるのか:収益モデルは2本柱
柱A:打ち上げサービス(小型ロケットElectron中心)
顧客の衛星をロケットに載せて宇宙へ運び、打ち上げ料金を受け取ります。小型衛星は「必要なタイミングで、必要な軌道へ」という要求が強く、相乗りでは満たしにくいケースがあるため、専用打ち上げが価値になり得ます。
同一顧客から複数回の打ち上げを受注しやすい点もモデル上の特徴です。材料記事では、iQPS向けの複数回打ち上げや、Synspectiveの複数回契約の拡大が例示されています。また、軍事目的の試験などで用いられるサブオービタル型の打ち上げにも関わっています。
柱B:スペースシステム(衛星・部品・国防向け衛星システム)
衛星の部品、衛星本体(バス)、場合によっては衛星ミッションを成立させるシステムまで作って納品し、対価を得ます。ここでの重要点は、単なる部品売りに留まらず、国防案件で主契約者(プライム)として“まとめて作る”仕事を取り始めていることです。
このモデルは、単発の打ち上げよりも案件が長期化しやすく、1案件あたりの規模も大きくなりやすい一方、納期・品質・量産の難易度が上がり、「実行力」がボトルネックになります。
なぜ選ばれているのか:提供価値(Top3)
中学生でも分かる言い方にすると、Rocket Labが評価されやすいポイントは次の3つです。
- 「予定通りに打ち上げる」ことが重要な世界で、打ち上げ回数と実績を積み上げている
- 衛星の部品から衛星本体まで作れる範囲が広く、外注依存による遅延リスクを下げやすい
- 国防のように要求が厳しい案件でも、プライムとして任され始めている
特に国防向けのプライム受注は「信頼の証明」になりやすく、同社の立ち位置を変え得るイベントとして材料記事で強調されています。
将来に向けた伸びしろ:成長ドライバーと“次の柱”
ここからは「どの方向に伸びようとしている会社か」を整理します。Rocket Labは、宇宙産業の拡大そのものよりも、事業の重心を「より継続的・大口・高要求」な領域へ移せるかが焦点になります。
成長ドライバー1:衛星が増えるほど仕事が増える構造
地球観測・通信・防衛などでコンステレーション(多数の衛星を並べる)が増えると、打ち上げ回数だけでなく、衛星製造や部品供給の需要も増えやすくなります。
成長ドライバー2:国防向け「まとめ受注」で単価と期間を引き上げる
18機規模の衛星製造契約のように、衛星をまとめて作る案件が増えると、事業の柱が打ち上げ一辺倒ではなくなり、工場型(量産・継続納入)に近づきます。一方で、固定価格・納期・品質の厳しさが増し、プロジェクト遂行の失敗が損失と信用毀損に直結しやすい点も同時に大きくなります。
成長ドライバー3:自社部品ライン拡張で供給力と粗利の取り分を増やす
部品の内製比率が高まるほど、調達難の影響を受けにくくなり、量産でも工程をコントロールしやすくなります。材料記事では、姿勢制御に関わる重要部品(例:リアクションホイール)の開発が示されており、自社製造で使うだけでなく外販にもつながり得る“部品の事業化”が視野に入ります。
将来の柱候補1:Neutron(中型ロケット)で市場の“上のクラス”へ
小型ロケットだけでは運べる荷物に限界があります。Rocket LabはNeutronという中型ロケットを育て、より重いペイロードやより大きな枠組みのミッションを狙っています。材料記事では、商業向けの複数回契約(2026年以降開始想定)や、国防のNSSL枠への参加、NASA枠組みへの参加といった「取れる仕事の種類が広がる」可能性が示されています。
なお、Neutronは初飛行時期が2026年へ後ろ倒しされた一方で、CEOのPeter Beckは「成功の定義を緩めず、初回から軌道投入を狙う」「地上試験でリスクを潰す」姿勢を繰り返し示している、という材料記事の整理も重要です。
将来の柱候補2:国防向けのセンサー搭載衛星(高付加価値の衛星づくり)
ミサイル警戒などの“難しい役割”を持つ衛星は要求が厳しく、任される企業が限られます。2025年12月の18機契約は、Rocket Labが衛星製造でも「格上の仕事」を取り始めたシグナルとして位置づけられます。
将来の柱候補3:衛星部品のラインナップ拡張
部品開発は、短期の売上規模が大きくなくても、長期の競争力の土台になり得ます。自社の衛星やシステム納入の原価・納期を安定させるだけでなく、外販が進めば「宇宙機メーカー向けサプライヤー」としての側面も強まります。
事業とは別枠で重要:縦の統合という“内部インフラ”
Rocket Labの競争力の土台は、ロケット・衛星・部品を縦にまとめて持つ統合度にあります。内製範囲が広いほど、納期やコストを自社でコントロールしやすく、国防のような厳しい案件で強みになり得ます。一方で、この「統合の裏面」として、社内のどこか一工程が詰まると全体が止まりやすい、という制約にもなります(後述のInvisible Fragilityにも直結します)。
長期ファンダメンタルズ:売上は急拡大、利益とキャッシュは未完成
Rocket Labをリンチ的に読むうえで重要なのは、「何が伸びていて、何がまだ型になっていないか」を分けることです。材料記事の長期データでは、売上の拡大が突出する一方、利益(EPS)とフリーキャッシュフロー(FCF)はマイナスが続いています。
売上:5年・10年で高成長(FY)
FY売上は2019年の約0.48億ドルから2024年の約4.36億ドルへ拡大しており、売上の5年CAGR(FY)は約+55.2%です。長期のトップライン成長は非常に強い部類に入ります。
EPSとFCF:CAGRは置けず、マイナスが継続(FY)
一方でEPSは2019〜2024の各年でマイナスで推移し、長期のCAGRはこの期間では評価が難しい状態です。FCFもFYでマイナスが続き、2024年のFCFは約-1.16億ドルです。つまり「売上成長の物語」はあるが、「利益とキャッシュが複利で増える型」はまだ見えにくい、というのが長期データの結論になります。
収益性:粗利は改善、営業段階は赤字(FY)
粗利率(FY)は2019年のマイナスから2024年に約26.6%まで改善しています。これは製造・調達・プロジェクト遂行の改善を示唆します。しかし営業利益率(FY)は2024年でも約-43.5%とマイナスで、事業全体として黒字化には至っていません。
資本効率(ROE):大きくマイナス(FY)
最新FY(2024)のROEは約-49.7%です。さらに、過去5年のROEトレンドは悪化方向(相関ベースでマイナス)と整理されており、資本効率の観点では厳しい状態が続いています。
財務の輪郭:流動性はあるが、負債比率の上昇も見える(FY)
2024年の自己資本は約3.82億ドル、D/Eは約1.22、キャッシュ比率は約1.23です。また、ネット有利子負債/EBITDAは約-0.33と、数値としてはネット現金寄りになり得る水準が示されています。短期の支払い能力は一定程度ある一方、利益とFCFがマイナスである以上、持続性(赤字が続く期間に耐える力)は別途点検が必要、という構図です。
リンチ6分類:現時点は「分類保留」が最も整合的
材料記事の結論は明確で、Rocket Labはリンチ6分類(Fast Grower / Stalwart / Cyclical / Slow / Turnaround / Asset Play)のどれにもきれいに当てはまらず、現時点では「分類保留」が妥当です。
- 売上は高成長(FY売上CAGR 約+55.2%)
- しかし利益(EPS)とFCFがマイナスで、利益の成長軌道が確定しない
- ROEも大きくマイナス(最新FY 約-49.7%)で、安定収益型(Stalwart)とは噛み合わない
無理に近い型を選ぶなら「Fast Growerになりにいっているが、まだ型が完成していない成長途中」に寄りますが、典型的な利益成長株として断定できる条件は揃っていない、という位置づけです。
サイクル性・ターンアラウンド性のチェック
- サイクル(景気循環)らしさ:売上はFYでもTTMでも一貫して増加基調で、典型的な山谷反復には見えにくい
- ターンアラウンドらしさ:四半期で一度だけ純利益がプラスの四半期がある一方、TTMでは赤字継続で、TTM EPSの前年同期比も約-1.2%と明確な反転とは言いにくい
短期モメンタム:売上は強いが、利益とキャッシュは「減速寄り」
長期の型が未完成な企業ほど、「直近8四半期〜TTMで、型が維持されているか」を見る価値が高くなります。材料記事の短期判定では、Rocket Labのモメンタムは総合的にDecelerating(減速)と整理されています。
売上:高成長は維持(TTM)、ただし“加速”ではない
売上のTTM前年比は+52.421%で、5年CAGR(FY、約+55.229%)と比べると±20%レンジ内に収まります。つまり、過去平均から見て「高成長は維持」だが「平均を明確に上回って加速」とまでは言いにくい、という判定です。なお直近2年の売上トレンドは強い上昇方向(相関+0.997)です。
EPS:改善が続いているとは言いにくい
TTM EPSは-0.3738、TTM EPSの前年比は約-1.217%でマイナス近辺です。長期でEPSがマイナス継続のためCAGR比較ができず、加速/安定の判定を定量的に置きにくい一方で、少なくとも「改善・加速」と言える形ではありません。直近2年のEPSトレンドも低下方向(相関-0.543)です。
FCF:前年比は改善でも、水準はマイナスのまま
TTM FCFの前年比は+60.059%と改善方向ですが、TTM FCFそのものは約-2.3156億ドルでマイナスです。さらに直近2年のFCFトレンドは低下方向(相関-0.719)で、YoYの改善と2年トレンドの弱さが同時に出ています。
収益性(営業利益率):マイナス域で推移しつつ、ブレも大きい
四半期の営業利益率は、たとえば24Q1が-46.4%、25Q3が-38.0%と、直近ではマイナス幅がやや縮小したように見える一方、四半期ごとのブレもあり、ここだけで「収益性が加速的に改善」とは言い切れない、という整理です。
ここまでを踏まえると、長期の「売上は伸びるが利益とキャッシュは未完成」という型は、短期(TTM)でも大きく崩れていません。
財務健全性:流動性は厚くなっているが、利払い余力は厳しい
倒産リスクを見るときは、単に赤字かどうかではなく「資金ショートの可能性」と「持久戦の余力」を分ける必要があります。材料記事では、短期の流動性が改善する一方、利払い能力は厳しいという二面性が示されています。
負債比率:直近四半期では改善方向(Q)
負債資本倍率(Q)は24Q4の1.225から25Q3の0.403へ低下しており、短期的に負債比率が悪化し続けている形ではありません。
キャッシュクッション:流動性指標は上昇(Q)
- 現金比率(Q):24Q4 1.234 → 25Q3 2.357
- 当座比率(Q):24Q4 1.689 → 25Q3 2.826
- 流動比率(Q):24Q4 2.040 → 25Q3 3.176
短期の支払い能力という意味では、クッションが厚くなっている動きが確認できます。
利払い余力:利益面でカバーできていない(Q)
インタレスト・カバレッジ(Q)は直近でも大きなマイナス(例:25Q3 -99.6)で、利益で利払いを十分にカバーできる状態ではない、という事実が示されています。
ネット負債:FYとQで見え方が違う(期間の違いによる差)
ネット有利子負債/EBITDAは最新FYで-0.326とネット現金寄りになり得る一方、四半期では24Q4 -1.213、25Q2 +3.630、25Q3 +9.783と振れが大きく、直近にプラス化しています。FYとQ(TTMではなく四半期)の見え方が異なるのは期間の違いによる見え方の差であり、単純な矛盾として断定せず、「短期の振れが大きい」論点として扱うのが適切です。
評価水準の現在地:自社ヒストリカルの中でどこにいるか
ここでは市場や同業との比較は行わず、材料記事にある通り「この会社自身の過去5年(主軸)・10年(補助)」の分布の中で現在地を整理します。なお、利益・FCFがマイナスの局面では、指標によっては分布が作れず、位置づけが難しいものが出ます。
PEG:現在値は示せるが、過去分布が作れず位置づけは難しい
PEGは171.77倍です。ただし過去5年・10年ともに分布(中央値・通常レンジ)が構築できないため、レンジ内/上抜け/下抜けの判定はできません。背景として、直近のEPS成長率(TTM YoY)が約-1.217%とマイナス近辺であり、PEGが「数値として大きく出ている」状態です。
PER:TTMがマイナスのため、レンジ比較が成立しにくい
PER(TTM)は-209.04倍です(TTM EPSがマイナスのため)。PEGと同様に過去分布が作れず、自社ヒストリカルでの位置づけはできません。ここで重要なのは、「利益がマイナスの状態で株価が付いているため、通常のPERレンジ比較が成立しにくい局面」という事実です。
フリーキャッシュフロー利回り(TTM):過去レンジを上抜け(マイナス幅が小さい側)
FCF利回り(TTM)は-0.55%です。過去5年の通常レンジ(-4.91%~-1.08%)に対して、現在は上抜け(より高い=マイナス幅が小さい)位置にあります。過去10年で見ても同様に上抜けです。一方、直近2年の動きとしては、数値トレンドは低下方向(相関ベースでマイナス)とされています(これは数値としての動きであり、原因の断定には踏み込みません)。
ROE(最新FY):過去5年・10年の通常レンジを下抜け(自社内で弱い側)
ROE(最新FY)は-49.73%で、過去5年通常レンジ(-36.28%~-6.84%)も、過去10年通常レンジ(-32.92%~-16.80%)も下回る位置です。自社ヒストリカルの中では弱い側に外れている、という整理になります。
FCFマージン(TTM):過去レンジを上抜け(ただし直近2年は低下方向)
FCFマージン(TTM)は-41.76%で、過去5年通常レンジ(-151.64%~-55.55%)や過去10年通常レンジ(-150.39%~-62.79%)より上側(マイナス幅が小さい側)に位置します。一方、直近2年の数値トレンドは低下方向(相関ベースでマイナス)です。
Net Debt / EBITDA(最新FY):過去レンジを下抜け(ネット現金寄り)
Net Debt / EBITDAは「小さい(マイナスが深い)ほど現金超過に近く、財務余力が大きい」逆指標です。最新FYのNet Debt / EBITDAは-0.33で、過去5年通常レンジ(0.23~3.91)と過去10年通常レンジ(0.37~3.35)をいずれも下抜けし、よりネット現金寄りに位置します。
6指標を並べた“形”のまとめ
- PERとPEGは現在値はあるが、過去分布が作れず自社ヒストリカルで位置づけしにくい
- 分布比較できる指標では、ROEは過去レンジを下抜け、FCFマージンとFCF利回りは過去レンジを上抜け
- Net Debt / EBITDAは過去レンジを下抜け(ネット現金寄り)
キャッシュフローの傾向:EPSとFCFの“ズレ”を前提に読む局面
Rocket Labは、売上が急拡大する一方で、EPSとFCFがマイナスの期間が続いています。ハードウェア+プロジェクト型の事業では、開発投資・設備投資・運転資本(在庫、売掛、支払条件)によって、利益とキャッシュがズレやすい構造があります。
材料記事の短期データでも、TTM FCFは約-2.3156億ドルとマイナスであり、前年比の改善(+60.059%)があっても、現時点では「キャッシュ創出企業としての安定性が出た」とまでは言いにくい、という整理です。ここは、成長の“質”を判断する上で、売上成長と合わせて継続的に見たい論点になります。
配当と資本配分:株主還元より「投資と持久力」が中心
Rocket Labは、TTMベースで配当利回りと1株配当の最新値が取得できず、少なくとも「配当を継続的に出し続けている銘柄」として投資判断を組み立てる状態ではありません。FYベースで配当が確認できる年も2年と短く、配当が主要テーマになっているとは言いにくいです。
現状はTTM純利益とTTM FCFがともにマイナスであるため、資本配分の中心は配当による還元ではなく、事業の立ち上げ・拡張に伴う投資と、それを支える資金繰り・バランスシート管理に置かれやすい局面だと整理できます。
成功ストーリー:Rocket Labが勝ってきた理由(本質)
Rocket Labの本質的価値は、「宇宙へ運ぶ(打ち上げ)」と「宇宙で使うものを作る(衛星・部品・システム)」を同じ会社の中でつなぎ、ミッション単位で“成立させる側”に回れる点にあります。
宇宙ビジネスは、遅延・仕様変更・調達難・品質問題が起きやすい領域です。そのため、単に部品が良い/ロケットが飛ぶだけではなく、「ミッションを期日までに成立させる能力」そのものが価値になります。Rocket Labは内製範囲の広さ(部品→衛星→打ち上げ)で、この“プロジェクト遂行能力”に価値を寄せていく構造です。
参入障壁は、技術だけでなく、品質・安全・調達・運用を含む総合力(=プロジェクト遂行能力)にあります。特に国防系は要求が厳しく、実績と信頼が参入障壁として機能しやすい領域です。
ストーリーの継続性:最近の動きは「成功パターンの延長」か?
ここ1〜2年の変化として大きいのは、「小型ロケットで衛星を運ぶ会社」から、「国防向け衛星をプライムで設計・製造する会社」へ、語られ方の重心が移っている点です。
- 以前の中心:Electronの打ち上げ回数・信頼性
- 直近で強まった中心:国防のミサイル警戒・追跡向け衛星を“まとめて作る”ことで、システム提供者へ進む
このストーリーは、縦の統合でミッション成立に寄るという成功ストーリーと整合します。一方で、数字面では売上成長に対して利益・キャッシュ創出が追いついていません。つまり「担う範囲が拡大している」方向性は一貫しているが、「利益面の物語はまだ完成していない」という距離が残ります。
このギャップは良し悪しの断定ではなく、次章のInvisible Fragility(見えにくい崩壊リスク)で点検すべき“観察ポイント”を明確にする材料になります。
Invisible Fragility:一見強そうに見えて、どこが脆いのか
Rocket Labは「統合型で信頼を積む」ストーリーを描ける一方、実行力が価値の中心であるがゆえに、崩れるときも“見えにくいところ”から来やすい、というのが材料記事の警告です。論点は8つあります。
1) 顧客集中:成功と引き換えに変動も大きくなる
複数回契約は安定性を作る反面、特定顧客の計画変更が稼働率・売上見通しに直撃しやすくなります。材料記事では、単一顧客から過去最大級のまとまった発注が出ている点が示されており、依存度が上がるほど変動も増える構造です。
2) 競争環境の急変:専用打ち上げが価格・供給勝負に寄るリスク
小型打ち上げは、需要が伸びても競合が増えると価格・条件・スケジュールの競争になりやすい領域です。Rocket Labの差別化が「頻度」と「実行力」である間は強みになり得ますが、競争が“値段と枠の取り合い”に寄ると、収益性が想定より改善しない可能性があります。
3) 差別化の同質化:統合モデルが当たり前になるリスク
「打ち上げ+製造」の統合は強みですが、業界の供給網が整うほど同様の統合モデルが増える可能性があります。差別化の核が「統合していること」だけだと同質化し、最終的には歩留まり・納期遵守・品質トラブルの少なさといった実行指標で勝負せざるを得なくなります。
4) サプライチェーン依存:部材・試験設備が全体を止める
宇宙ハードは特定部材や試験設備のボトルネックがプロジェクト全体を止めやすい産業です。内製化はリスク低減になり得ますが、内製範囲が広いほど「社内のどこか1工程が詰まる」影響も大きくなります。
5) 組織文化の劣化:急成長に組織が負けるリスク
急成長・案件大型化では現場負荷が上がり、採用・定着・品質文化が揺らぎやすいのが典型です。材料記事では、外部コミュニティ上で忙しさ・負荷に触れる文脈が見られる点が挙げられています(断定ではなく監視項目)。
6) 収益性の劣化:売上が伸びても採算が固まらない
売上拡大に対して利益・資本効率が弱い状態が続いています。大型案件が増えるほど初期の立ち上げコストや開発費、量産準備の固定費が先に出て、「売上増=利益増」になりにくい局面が長引く可能性があります。
7) 財務負担(利払い能力):黒字化前に資金コストが効く
流動性は改善している一方、利益面での利払い余力が弱い状態は続いています。このタイプの企業で起きやすいのは、資金繰りが突然詰まるというより、黒字化の手前で追加投資・遅延・コスト超過が重なり、資金コストがじわじわ重くなる形です。
8) 業界構造の圧力:国防固定価格の厳しさ(納期・品質・コスト)
国防の大型契約は企業の格を上げますが、納期・品質・コスト管理の失敗が致命傷になりやすい世界です。材料記事では、直近プログラムが固定価格契約であり、複数社が同規模の衛星を担当する枠組みである点が示されており、遅延や品質問題は次の機会の減少に直結し得ます。
競争環境:Rocket Labは誰と戦い、何で勝つ(負ける)のか
Rocket Labの競争環境は、「打ち上げ」と「衛星・システム」で競争軸も競合も変わります。そして同社は、その2つをつないで“ミッション成立”側へ寄っていく立ち位置です。
主要競合プレイヤー(材料記事に基づく)
- SpaceX:小型衛星領域では相乗り(ライドシェア)が強い代替になりやすい
- Firefly Aerospace:小型〜中型寄りで政府系枠を狙い、信頼性回復が進むと競争圧力になり得る
- Relativity Space:中型領域で比較対象になり得る(Neutronの狙う領域)
- Blue Origin:大型で国家安全保障へ寄せ、国防の供給構造に間接影響
- Lockheed Martin / Northrop Grumman / L3Harris(他の大手プライム含む):国防の衛星・システム統合で同じ土俵の相手
事業領域別の競争マップ(何が代替で、何が差別化か)
- 小型打ち上げ(専用):競争軸は価格だけでなく、スケジュール確度、希望軌道、契約から打ち上げまでの短さ、供給枠の継続供給
- 小型打ち上げの強い代替:SpaceXの相乗り(条件が合えば合理的に置き換わり得る)
- 衛星・部品:技術そのものより、品質保証、調達と納期、量産時の歩留まり、試験・認証を含む遂行力
- 国防向け衛星システム(プライム):固定価格での原価管理、量産ライン立ち上げ、納期遵守、要求適合が勝負
スイッチコスト(乗り換えにくさ)はどこで生まれるか
- 小型打ち上げ:物理的には他社でも上げられる一方、複数回契約が成立すると顧客計画が“その会社前提”になり、契約・運用・保険・統合手順の再設計などで乗り換えコストが生まれやすい
- 国防の衛星・システム:認証・要件適合・試験プロセスが重く、いったんプログラムに入ると次期ブロックも同系統になりやすい惰性が働く一方、固定価格の失敗は逆回転(次の機会喪失)も大きい
Moat(モート):何が“堀”で、どれだけ持続しそうか
Rocket Labのモートは「技術の秘密」よりも、“実行の積み上げ”に寄っています。具体的には次のようなタイプです。
- 運用モート:打ち上げを高頻度で回す運用能力と実績の蓄積
- プロセス/製造モート:衛星・部品を量産で納める工程能力、試験・品質保証を含む遂行力
- 信頼モート:国防案件のような高要求領域での実績が、入札・継続発注の確率に効きやすい
このモートの耐久性は静的ではありません。実績が積み上がるほど強化される一方、重大な遅延や不具合が出ると毀損し得るタイプです。材料記事の表現に沿えば、長期の分岐点は小型打ち上げ単体ではなく、国防・衛星システム側の“量産プログラムの遂行”が成立するかに寄っていきます。
AI時代の構造的位置:AIで勝つ会社というより、AIで強化される実行企業
材料記事の整理では、Rocket LabはAIの基盤企業でも一般向けアプリ企業でもなく、物理システムを成立させる「現実世界オペレーションに近い中間レイヤー」に位置します。AIは価値の核というより、生産性・品質・納期遵守を押し上げる補完要素になりやすい、という位置づけです。
ネットワーク効果:実績の蓄積が信頼を生むタイプ
消費者向けの利用者増ネットワーク効果ではなく、打ち上げ実績とミッション遂行の蓄積が信頼を生み、次の受注確率を押し上げるタイプです。国防・政府ミッションほど、この効果は参入障壁の一部として機能しやすい一方、ソフトウェアのように急拡大しにくく、量産・納期・品質の実行力が前提になります。
データ優位性:独占データより「工程データを改善に回せるか」
強みはデータの独占ではなく、製造・試験・運用に近い現場データを設計改善や歩留まり改善に循環させられるかにあります。衛星プライム案件が増えるほど学習ループが太くなり得ますが、現時点で決定的優位と断定できる材料は薄く、優位性は“実行の継続”で後から形成される性質が強い、とされています。
AI統合度:顧客向けAIより、社内オペレーション高度化が主戦場
AI機能を顧客に売るより、製造・品質管理・調達・試験・運用準備などを高度化する方向が主戦場になります。材料記事では、国防向けのサプライチェーン強化と、宇宙グレード半導体や電気光学系などの生産能力拡張を打ち出しており、AI以前に「国内供給・製造能力」が価値の中心にある構造が示されています。
AI代替リスク:置き換えより“競争を濃くする”方向
打ち上げや衛星製造は生成AIが直接置き換えるタイプではありません。AIが効くとすれば、設計・解析・ドキュメントの効率化で競合も同等の設計水準に近づきやすくなり、差別化が技術から実行へさらに収束する圧力が強まる、という形です。
経営・文化・ガバナンス:Peter Beckの「成功定義を緩めない」姿勢は武器にも負担にもなる
Rocket Labのストーリー(打ち上げだけから、衛星・部品・国防のシステムへ)を体現しているのが創業者CEOのSir Peter Beckです。材料記事では、Neutronの立ち上げで「期日優先ではなく、成功の定義を厳格に置く」姿勢が繰り返し示され、初飛行を2026年へずらしつつも、初回から軌道投入を成功基準として掲げ、地上試験でリスクを潰すことを優先する、と整理されています。
人物像→文化→意思決定→戦略(因果)
- 人物像:地上で潰せるリスクは地上で潰し、成功定義を緩めない
- 文化:品質・試験・手順を軽視しない(官僚的に遅いのではなく、失敗しないために速く学ぶ)
- 意思決定:新型ロケットは「とにかく飛ばす」より「勝てる状態で飛ばす」。国防の量産・固定価格へ寄るほど工場化と品質保証を優先
- 戦略:打ち上げと宇宙機をつなぎ、国防の高要求領域で任される範囲を広げる
この文化は長期の信頼獲得に効きやすい一方、現時点では利益・キャッシュ創出が弱く資本効率も大きくマイナスであるため、短期的にはコストが先行しやすいという緊張関係も生みます。長期投資家にとっては、「文化が正しい」だけではなく、その文化が量産の安定、原価の予見性、納期遵守の再現性につながっているかが監視ポイントになります。
従業員レビューの一般化パターン(断定ではなく“起きやすい型”)
- ポジティブに出やすい:ミッション志向、学習機会の大きさ、エンジニアリング中心の速度感
- ネガティブに出やすい:繁忙・負荷、品質・手順重視による文書化や認証のストレス、優先順位変更の摩擦
ガバナンスの読み方(分かる範囲)
2025年の持株会社化(上場主体の組み替え)では、経営陣の継続が明示されており、文化の急変シグナルとは言いにくい、と整理されています。一方、国防の大型案件が増えるほど、品質・コンプライアンス・プログラム管理の重みが増すため、管理体制(人材・統制)の強化が長期的な変数になります。
投資家が「数字以外」で持つべき視点:市場ナラティブと現実の距離
Rocket Labは、市場が「将来の巨大な任務を任される側に行く」というストーリーで語りやすいタイプです。一方で現実は、価値の中心が“実行”であるがゆえに、実行の証拠(量産の再現性、納期遵守、固定価格案件の原価管理)が積み上がるまで、評価と実態の距離が出やすいとも言えます。
- 過大評価になり得る形:まだ積み上がっていない再現性まで織り込む
- 過小評価になり得る形:単年度の数字だけで、実行が積み上がる過程の価値を切り捨てる
KPIツリー:企業価値の因果構造(どこを見ればストーリーが崩れる/強まるか)
材料記事のKPIツリーは、Rocket Labを「売上成長株」としてではなく「実行が複利になるかどうかを観察する銘柄」として読むための地図になります。
最終成果(Outcome)
- 持続的な利益創出力(赤字局面からの改善を含む)
- フリーキャッシュフローの創出力
- 資本効率(ROEなど)
- 財務の持久力(赤字と投資が続く局面での耐性)
- 受注の質に裏打ちされた継続成長(単発ではなく繰り返し)
中間KPI(Value Drivers)
- 売上成長:固定費吸収の余地を作り、損益分岐改善に近づく
- 売上総利益率:製造・調達・遂行の改善が利益に直結しやすい
- 営業コスト吸収:研究開発・販管費を売上で薄められるか
- プログラム遂行の再現性:納期・品質・試験・認証を繰り返し成立させる力
- 設備投資・開発投資の負荷:新型ロケットや量産体制への投資がキャッシュ創出時期を左右
- 運転資本の圧力:在庫・売掛・支払条件でキャッシュが利益とズレやすい
- 顧客・案件ミックス:商業/政府/国防、打ち上げ/宇宙機の構成が収益性を変える
- 流動性クッション:短期支払い能力
- 財務負担の重さ:利払い余力・負債比率の管理
ボトルネック仮説(Monitoring Points)
- 国防の衛星量産が「初号機」から「複数機の期日納入」へ移る過程で、部材・試験・品質保証が詰まっていないか
- 固定価格・高要求案件で、仕様追加や再設計の兆候が増えていないか
- 売上の高成長が続く一方で、利益とキャッシュの改善が追随しているか(売上増が損失拡大に繋がっていないか)
- 打ち上げで複数回契約が積み上がる一方、供給枠の制約や遅延が連鎖していないか
- 重心がシステム納入責任へ移る中で、品質・納期トラブルが“信頼の資産”を毀損していないか
- 内製範囲の拡大が調達リスク低下に効く一方、社内の特定工程が全体ボトルネックになっていないか
- 繁忙や手順負担の増加が、採用・定着・現場疲弊を通じて再現性に影響していないか
- 流動性が改善している一方で、利益面の利払いカバー力の弱さが継続していないか
Two-minute Drill:長期投資家向け「投資仮説の骨格」
Rocket Labを長期で評価する本質は、「宇宙の仕事を取れる会社」かどうかより、「宇宙の仕事を期日通りに何度も納められる会社」へ移行できるかにあります。打ち上げと宇宙機を束ねた統合能力で、国防のような高要求領域で信頼を積み上げられるなら、単なる打ち上げ企業ではなく宇宙インフラの供給者として“信頼の複利”が効く位置に進み得ます。
一方で、現時点では売上成長に対して利益(EPS)とキャッシュ(FCF)が追いつかず、ROEも大きくマイナスです。固定価格・量産の国防案件やNeutron立ち上げで、納期・品質・工場化のどこかが崩れるとストーリー全体の説得力が急速に落ち得ます。注目点はニュースの多さではなく、「実行の再現性が積み上がっているか」を観測可能なKPIで追えるかです。
AIと一緒に深掘りするための質問例
- Rocket Labの国防向け衛星プライム案件(18機規模)について、量産の立ち上げが「初号機→複数機の期日納入」に移る際のボトルネック(部材・試験設備・品質保証・人員)を時系列で整理してほしい。
- 小型打ち上げで複数回契約が成立した顧客が、専用打ち上げを選び続ける条件(軌道要件、スケジュール自由度、保険、運用計画)と、相乗りや他社へ切り替わる典型パターンを整理してほしい。
- Rocket Labで「売上成長が利益・FCFに変換されない」要因を、研究開発費・販管費・製造原価・プロジェクト原価・運転資本のどこが主要因かという観点で、公開情報ベースで分解してほしい。
- Net Debt / EBITDAがFYではネット現金寄りに見える一方で四半期では振れが大きい点について、短期の資金需給(運転資本、投資、契約前受け等)の仮説を複数提示して検証してほしい。
- Neutronの2026年初飛行に向けて、CEOが重視する「成功定義を緩めない」文化が、コスト・スケジュール・受注(特に国防枠)に与えるプラス面とマイナス面を整理してほしい。
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ここで言及される投資フレームワークや視点(例:ストーリー分析・競争優位性の解釈など)は、
一般的な投資概念や公開情報を参考にした独自の再構成であり、
いかなる企業・組織・研究者による公式な見解ではありません。
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