MongoDB(MDB)とは何者か:Atlasを軸に「運用データ+検索+AI」へ広げる一方、利益の型がまだ定まらない成長企業

この記事の要点(1分で読める版)

  • MongoDBは企業アプリの「運用データの置き場」を、開発の変更耐性と運用の手離れ込みで提供し、継続課金で稼ぐ企業。
  • 主要な収益源はクラウド版のMongoDB Atlasで、FY2026の四半期(Q1〜Q2)では売上の7割強がAtlas由来とされる。
  • 長期ストーリーは、売上がFYで10年CAGR +46.3%と高成長を続けつつ、検索・ベクター検索やAMP、公共・規制対応で採用可能領域を広げる構造にある。
  • 主なリスクは、Atlasへの依存と従量課金の最適化圧力、互換APIとオープン標準化によるスイッチングコスト低下、統合戦略に伴う競争軸の拡散と組織実行リスクにある。
  • 特に注視すべき変数は、売上成長率の減速要因(新規・既存利用増・最適化の内訳)、会計利益とFCFのねじれの中身、検索・ベクター検索統合が総コスト削減として実感されるか、互換APIの実用域の広がり、CEO交代後の優先順位の線引き。

※ 本レポートは 2026-01-08 時点のデータに基づいて作成されています。

MongoDBは何の会社か(中学生向けに)

MongoDBは、企業のアプリやサービスが使う「データの置き場(データベース)」を提供する会社です。アプリは、ユーザー情報・注文・在庫・ログ・メッセージなど、いろいろなデータを「貯める/取り出す/探す」必要があります。MongoDBは、それを速く・簡単にし、しかも変更が多い現代のアプリ開発に合わせやすいことを売りにしています。

たとえるなら、散らかった紙の台帳で回していたお店のバックヤード(在庫・注文・顧客情報)を、変更に強いデジタル管理に置き換える仕組みです。お店(アプリ)が成長して扱う商品(データの種類)が増えても、運用し続けやすいことに価値があります。

誰に価値を提供しているか(顧客)

  • 大企業〜中堅企業〜スタートアップまでの企業(業界横断で必要)
  • 社内でアプリを作る開発者(現場の採用が起点になりやすい)
  • 一部、政府・公共系(オンプレ必須など制約が強い環境を含む)

主力サービス:クラウド中心(Atlas)+自社運用(Enterprise)

1) MongoDB Atlas(クラウド版):最大の売上の柱

AtlasはMongoDBが運用まで面倒を見るクラウド版です。増設・バックアップ・監視・障害対応などの運用負担を顧客が抱えずに済み、アプリ開発に集中できます。決算ベースでもクラウド比率は高く、FY2026の四半期(Q1〜Q2)では売上の7割強がAtlas由来とされています。

2) Enterprise Server / Enterprise Advanced(自社運用):Atlasより小さいが重要

規制、機密、既存システム都合などでクラウドに置けない企業は、自社サーバーやデータセンターでMongoDBを動かします。最近では公共系マーケットプレイスでの提供など、機密性の高い環境でも買いやすくする動きが示されています。

どうやって儲けるか:サブスク+(Atlasは)使うほど増える課金

収益モデルの中心はサブスクリプション(継続課金)です。

  • Atlas:使った分だけ課金に近い形になりやすく、顧客のアプリが成長すると利用量が増え、売上が伸びやすい構造
  • 自社運用(Enterprise):ライセンス・サポート・追加機能など。長期利用になりやすい一方、全体の成長エンジンはAtlas側に寄りやすい

このモデルの肝は、顧客の成功(利用拡大)がMongoDBの売上増に結びつきやすい点です。一方で、従量課金は顧客の「最適化(利用抑制)」が起きると伸び方がぶれやすい、という性質も内包します。

選ばれる理由(提供価値):速さ以上に「開発と運用の面倒を減らす」

価値1:変更に強く、開発が速くなる

アプリは仕様変更が多いのが普通です。MongoDBは「データの形が変わりやすい現場」で扱いやすい設計を売りにし、変更・追加に追随しやすい点が評価されます。

価値2:クラウドで世界に広げやすい(運用の手離れ)

Atlasはグローバル展開や利用拡大局面で、運用負担を減らしながらスケールしやすい、という文脈で語られます。

価値3:「置き場」から「検索・AI」へ(統合の拡張)

最近のアプリは、貯めるだけでなく「検索」「分析」「AI活用」まで一連でやりたいニーズが増えています。MongoDBは周辺機能として、全文検索ベクター検索(意味の近さで探す検索)を統合していく流れを強めています。

将来に向けた取り組み:次の柱になり得る3つ

1) AI向け機能(検索・ベクター検索)をクラウド外にも拡張

2025年9月に、Atlas中心だった検索・ベクター検索を自社運用(Community Edition / Enterprise Server)にも広げる発表がありました。クラウドだけでなくオンプレでもAIアプリを作れるようにし、利用範囲を広げる狙いです(プレビュー段階であり、実運用での広がりは今後の観測事項です)。

2) Application Modernization Platform(AMP):AIで“作り直し”を支援

2025年9月にMongoDB AMP(AIを使ったアプリ近代化支援)を発表しています。単にDBを売るだけでなく、古いアプリを新しい形に変える過程でMongoDB採用を後押しし、導入のハードルを下げる入口になり得ます。

3) 大手クラウド(特にMicrosoft/Azure)とのAI・セキュリティ連携

2025年後半の発信ではMicrosoftとの連携(AI開発、セキュリティ、ガバナンス統合)を強調しています。Azure上でAIアプリを作る企業にとって「標準的なデータ基盤」になりにいく動きで、大型顧客獲得の追い風になり得ます。

長期のファンダメンタルズ:売上は高成長、利益はまだ安定せず

MongoDBを長期投資で見るとき、最初に押さえるべきは「売上の伸び」と「利益の型」が一致していない点です。

売上:10年で見ても強い成長

  • 売上CAGR(FY、5年):+36.6%
  • 売上CAGR(FY、10年):+46.3%
  • 売上規模(FY):FY2016の0.65億ドル → FY2025の20.06億ドル

売上だけを見ると高成長企業の特徴が強い一方、次の利益・資本効率が同じ形で付いてきていません。

EPS(会計利益):FYでは一貫してマイナス、成長率は評価が難しい

FYのEPSはFY2016〜FY2025で一貫してマイナス(例:FY2025は-1.73)です。このため、EPSの5年・10年CAGRは算出できず、長期の「利益成長率」という物差しでの整理が難しい局面です。

マージン:粗利は高いが、営業・純利益はまだマイナス

  • 粗利率(FY2025):約73.3%(FY2016の約68.0%から長期で高水準)
  • 営業利益率(FY2025):約-10.8%(FY2016の約-111%から改善方向)
  • 純利益率(FY2025):約-6.43%(FY2016の約-113%から改善方向)

フリーキャッシュフロー(FCF):近年プラス化、ただし長期CAGRは評価が難しい

  • FCF(FY):FY2016は-0.47億ドル、FY2024は+1.15億ドル、FY2025は+1.21億ドル
  • FCFマージン(FY2025):+6.01%
  • 営業CFマージン(FY2025):+7.49%

FYではマイナスの年が長く、後半でプラス化しているため、FCFの5年・10年CAGRは算出できず、単純な成長率比較はしにくい構造です。

リンチ的な「企業の型」:Fast Growerの顔をしつつ、実態はサイクリカル寄りのハイブリッド

MongoDBは、売上成長だけを見るとFast Growerに近い一方、利益(EPS)とROEが安定して積み上がっていないため、最も近い分類はサイクリカル(Cyclical)寄りのハイブリッド型と整理されます。ここでいうサイクルは景気循環というより、「利益の出方が一定せず、投資家体感として波を作りやすい」という意味合いが中心です。

  • 売上10年CAGR(FY):+46.3%
  • ROE(最新FY):-4.64%
  • EPS(TTM):-0.872、かつEPSの前年同期比(TTM):-67.8%

足元(TTM/直近8四半期)のモメンタム:売上は伸びるが減速、利益は弱く、FCFは強い

長期の“型”が短期でも維持されているかを見ると、MongoDBは「売上成長は継続」しながら、「伸び率は中期平均より落ち」、さらに「会計利益とキャッシュフローがねじれている」状態が確認できます。

総合判定:Decelerating(減速)

総合モメンタムはDecelerating(減速)と整理されています。主因は、売上の伸び率が5年平均を下回っていること、EPSが悪化していることです。

売上:成長は続くが、過去5年平均より減速

  • 売上(TTM):23.17億ドル
  • 売上YoY(TTM):+20.9%
  • 売上CAGR(FY、5年):+36.6%

直近1年(TTM)の売上成長+20.9%は、5年平均(FYのCAGR +36.6%)を下回ります。これは「期間の違い(FYとTTM)による見え方の差」で矛盾ではなく、伸びてはいるが“伸び率は落ちている”という読みになります。

EPS:赤字のまま、前年同期比でも悪化

  • EPS(TTM):-0.872
  • EPS YoY(TTM):-67.8%

なお、5年平均のEPS成長率は算出できないため、「直近1年が長期平均より速い/遅い」といった厳密比較はできません。材料としては、直近2年のTTMトレンド相関が+0.87と改善方向に寄る一方で、足元の前年比は悪化している、という“ねじれ”が観測されています。

FCF:大きく改善(ただし利益はまだ赤字)

  • FCF(TTM):3.55億ドル
  • FCF YoY(TTM):+139.6%
  • FCFマージン(TTM):+15.3%
  • 純利益(TTM):-0.71億ドル

「会計上の赤字」と「FCFの大幅なプラス」が同時に起きています。これは投資家にとって重要で、投資由来の利益圧迫なのか、事業採算が弱いのかを見分ける必要がある論点です(断定材料はなく、ここでは“そうなっている事実”を置きます)。

営業利益率(FY):直近3年で赤字幅は縮小

  • FY2023:-27.0%
  • FY2024:-13.9%
  • FY2025:-10.8%

直近3年(FY)では改善していますが、FY2025時点でもマイナスであり、黒字で伸びる局面に到達したとは言い切れません。

財務健全性:手元流動性は厚いが、利払い余力は利益面で弱い

倒産リスクを考えるときは、負債の量だけでなく、流動性(手元資金)利払い能力(利益の強さ)を分けて見る必要があります。

短期の資金繰り:流動性は高い

  • 流動比率(FY2025):5.20
  • 現金比率(FY2025):4.16
  • 負債資本倍率(FY2025):0.013(四半期ベースでも0.012前後)

これらは、少なくとも短期の資金繰りという意味ではキャッシュクッションが厚いことを示します。

利払い余力:利益面では強い状態と言いにくい

  • インタレスト・カバレッジ(FY2025):-15.26

利払い余力がマイナスであるため、利益面から見ると「利払いを十分にカバーしている」とは整理しにくい状態です。したがって、現状は資金繰りは厚いが、利益の強さはまだ十分ではないという二面性になります。

設備投資負担:TTMでは小さい

  • 営業キャッシュフローに対する設備投資比率(TTM):約1.1%

設備投資負担が相対的に小さいことは、FCFを押し上げやすい構造要因の一つになり得ます。

キャッシュフローの質:FCFは強いのにEPSが弱い「ねじれ」をどう扱うか

MongoDBは足元TTMでFCFが大きく改善し、FCFマージンも+15.3%まで上がっています。一方、純利益(TTM)は-0.71億ドルで赤字です。

このねじれは、成長企業では「会計上の費用(例:人件費・販売・研究開発など)や投資のタイミング」によって生じることもありますが、材料記事の範囲では内訳の断定はできません。投資家としては、FCFの改善が一時的な要因か、構造的に残る体質変化かを見極める必要があります。

配当と資本配分:インカム銘柄というより、成長とキャッシュ創出が主題

配当は、直近TTMでは配当利回り・1株配当ともに数値が取得できず、評価が難しい状態です。一方でFYベースでは配当支払い(1株配当の計上)が確認できる年もあり、配当がゼロと断定するより、断続的に観測されるという整理になります。

資本配分の観点では、直近TTMでFCFがプラス(約3.55億ドル)で、設備投資負担も小さいため、資本配分の自由度は一定程度あります。ただし、現時点のデータからは、配当が主要な還元手段だと言い切れません。したがってこの銘柄の本筋は、インカムではなく成長とキャッシュ創出力(必要なら他の還元手段)に置かれます。

評価水準の現在地(自社ヒストリカル比較のみ)

ここでは市場平均や同業比較ではなく、MongoDB自身の過去5年(主軸)・10年(補助)の分布の中で、現在地を「レンジ内/上抜け/下抜け」として整理します。なおFYとTTMで見え方が違う指標は、期間の違いによる見え方の差として扱います。

前提:本レポート日株価と、利益指標の制約

  • 株価(本レポート日):420.82ドル
  • EPS(TTM):-0.872 → PER(TTM)は-482.54倍

EPSがマイナスのため、PERは通常の比較に使いにくく、またヒストリカル分布も作れないため「現在値の提示」に留まります。

1) PEG:現在値はあるが、過去分布が作れず現在地は評価が難しい

  • PEG(現時点):7.12

直近のEPS成長率(TTM YoY)が-67.8%とマイナスである影響もあり、PEGの過去5年・10年の分布情報がなく、レンジ内外の判定はできません。

2) PER:赤字のため現在値提示に留まる

  • PER(TTM):-482.54倍

こちらも過去分布が作れず、直近2年の方向性も評価が難しい指標です。

3) フリーキャッシュフロー利回り:過去5年・10年ともに上側を上回る

  • FCF利回り(TTM):1.04%
  • 過去5年の通常レンジ(20–80%):-0.37% ~ +0.75% → 上抜け
  • 過去10年の通常レンジ(20–80%):-0.98% ~ +0.52% → 上抜け

FCF利回りは、過去比較では「利回りが高い側」に寄っています。これは将来リターンを示すものではなく、あくまで自社過去平均との差としての位置づけです。直近2年の動きとしては上昇傾向が示されています。

4) ROE:過去レンジ内だがマイナス

  • ROE(最新FY):-4.64%
  • 過去10年レンジ(20–80%):-47.33% ~ +30.63% → 内側

過去5年レンジは上限が極端に大きい(自己資本側のブレ等で歪みやすい)ため解釈には注意が必要ですが、事実としてはレンジ内です。直近2年の方向性は情報が揃わず、断定できません。

5) FCFマージン:過去5年・10年ともに上抜け

  • FCFマージン(TTM):15.30%
  • 過去5年の通常レンジ(20–80%):-3.10% ~ +6.18% → 上抜け
  • 過去10年の通常レンジ(20–80%):-32.19% ~ +1.11% → 上抜け

過去比較では「キャッシュ創出の質が高い側」に寄った現在地です。直近2年の動きとしては上昇傾向が示されています。

6) Net Debt / EBITDA:過去レンジを上抜け(ただし逆指標である点に注意)

  • Net Debt / EBITDA(最新FY):23.83
  • 過去5年の通常レンジ(20–80%):1.75 ~ 10.20 → 上抜け
  • 過去10年の通常レンジ(20–80%):0.52 ~ 6.00 → 上抜け

Net Debt / EBITDAは値が小さい(マイナスが深い)ほど現金が多く財務余力が大きいという逆指標です。現在値23.83は過去レンジを上回る位置で、直近2年で上昇傾向とされています。もっとも、この指標は分母のEBITDAが小さい局面で“極端に見えやすい”性質があり、ここでは「そう見える局面にある」という事実として整理します。

MongoDBが勝ってきた理由(成功ストーリーの核)

MongoDBの成功の核は、データベースという技術を売るだけでなく、「開発しやすさ」と「運用しやすさ」をセットで提供して、アプリ開発の現場の総コストを下げる点にあります。

  • 開発者採用→社内標準化:現場で選ばれると、別チーム・別アプリに横展開しやすい(間接的なネットワーク効果)
  • ミッションクリティカル性:採用されるとアプリの根幹に近く、置き換えが起きにくい性質を持つ
  • 運用・信頼性・監査対応:参入障壁は実装力だけでなく、運用実績・セキュリティ・監査対応・コミュニティ浸透にある

特に公共・規制領域では認証が採用可能性を左右し、MongoDBは政府向けクラウドでFedRAMP High/IL5を狙う方針を示しており、ここは「採用できる上限を上げる」取り組みになり得ます。

戦略は成功ストーリーと整合しているか(ナラティブの継続性)

最近の動きは、成功ストーリー(開発+運用の総コスト削減、プラットフォーム化)と概ね整合しています。ポイントは2つです。

  • AI文脈の位置づけが上がった:検索・ベクター検索が「周辺機能」から「標準要件」へ寄り、クラウド専用だった機能を自社運用にも広げた(どこでもAIアプリを作れる方向へ)
  • 公共・規制領域の取り込みを上に引き上げ:より高いセキュリティ認証を目指し、採用可能領域の上限を押し上げようとしている

数字面でも、「売上は伸びているが伸び率は鈍化」「キャッシュフローは改善しているが会計利益は赤字域」という現状は、拡張と投資の途中というナラティブと整合的です。

Invisible Fragility(見えにくい脆さ):強みに見える構造が、同時に制約にもなる

1) 収益源の偏り:Atlas比率の高さは強みであり依存でもある

Atlasが売上の7割強という構造は、成長の柱が明確という強みです。一方で、クラウド従量課金への依存でもあり、顧客のコスト最適化(利用抑制)が起きると、売上の伸び方に影響しやすくなります。

2) 差別化の主戦場が「統合機能」へ広がり、競争軸が増える

検索・ベクター検索の統合は自然な拡張ですが、周辺プレイヤーも多く、顧客は「結局どこでやるのがラクで安いか」で判断しがちです。差別化がDB単体から周辺統合へ広がるほど、競争軸と説明コストが増える点は脆さになり得ます。

3) 財務指標の“見え方”が急に悪化し得る(分母が小さい局面)

利益面が弱いと、Net Debt / EBITDAのような指標が極端に見えやすい性質があります。ここは危機と断定するより、利益回復が遅れた場合に、見え方が一気に悪化し得るという脆さの芽として整理されます(利払い余力が弱いという事実とも接続します)。

4) 組織面:優先順位の揺れや上層の入れ替わりが実行力を落とすリスク

外部の従業員口コミ(一般化)では、優先順位の入れ替え、マネジメント層の変更、組織の混乱といった指摘が観測されます。統合領域(検索・AI・政府対応など)を広げる局面では、実行の一貫性が重要になるため、この論点は無視できません(口コミは偏りやすいので、事実の断定ではなく傾向として扱います)。

5) サプライチェーン依存は小さいが、クラウド基盤依存は大きい

ハード供給網への依存は薄い一方、クラウド上での運用、データ転送コストなど、クラウド基盤側の条件に影響されやすいモデルです。これは見えにくい制約になり得ます。

競争環境:戦う相手は「同業DB」だけでなく「互換API」と「オープン標準化」

MongoDBが戦う市場は巨大ですが、「普通でいることが難しい」タイプでもあります。理由は、データベースがミッションクリティカルで継続課金になりやすい一方、クラウド各社が自社サービスを強く押し出し、機能だけでなく調達・統合・運用を含めた総力戦になりやすいからです。

主要競合(例)

  • Amazon DocumentDB(AWS):MongoDB互換を掲げるマネージドDB
  • Azure Cosmos DB(Microsoft):NoSQL基盤として強く、検索機能強化を継続
  • Google Cloud Firestore(MongoDB互換):MongoDB互換を前面に出し一般提供
  • DocumentDB(Linux Foundation配下のオープンソース):PostgreSQL拡張を土台にMongoDB互換APIを掲げ、標準化・ロックイン回避の流れを後押しし得る
  • Couchbase(Capella):NoSQLの比較対象になり得る
  • PostgreSQL系(マネージド含む):JSONや拡張でドキュメント用途を吸収し、「別にドキュメントDBを持たない」設計の選択肢

スイッチングコスト:高いが、下がり得る圧力がある

  • 置き換えが起きにくい要因:データ移行、クエリ差分、運用手順、監査・バックアップ・監視の作り直し
  • 置き換えが起きやすくなる要因:互換APIが普及し「コード変更を抑えた移植」が現実味を帯びる(スイッチングコスト低下)

投資家がモニタリングすべき競争KPI(変数)

  • MongoDB互換APIが、CRUD以外(集計・インデックス・運用機能)までどこまで“実用域”に広がるか
  • AWSやAzureなど主要クラウドのドキュメントDBが、性能・運用・価格の改善をどれだけ継続するか
  • Linux Foundation配下のDocumentDBが、マルチクラウド/オンプレで採用される導線を作れるか
  • AI検索(全文・ベクター)が「どこでも同じ」へ一般化するのか、運用統合で差が残るのか
  • 選ばれ方が、新規ワークロード中心か、既存置き換え中心か(置き換え比率が上がるほど価格・移植容易性の勝負になりやすい)

Moat(モート)と耐久性:開発者標準化の積み上げ vs 互換・標準化による侵食

MongoDBのモートは、単なる機能の壁というより、開発者採用→社内標準化→ミッションクリティカル化という積み上げにあります。さらに、運用実績・信頼性・セキュリティ・監査対応、そして周辺エコシステム(クラウド連携、データ連携、AI開発ツール連携)を一体で成立させることが参入障壁になります。

一方で、モートを侵食し得るのは互換API+オープン標準化です。「互換で十分」という選択肢が広がると、差別化は統合の便利さや運用総コストへ寄り、クラウド標準機能との比較が常態化しやすくなります。

AI時代の構造的位置:AIに代替される側ではなく、AIが依存する“運用データ層”

構造的に追い風になり得る点

  • データ優位性:独自データを保有する優位というより、顧客の運用データが集まる場所(運用DB)に近いことが強みになり得る
  • AI統合度:格納+全文検索+ベクター検索を近い場所で扱い、さらに自社運用にも拡張して適用範囲を広げている(プレビュー)
  • 導入摩擦の低減:クラウド各社やAI開発基盤との接続点を増やし、採用の摩擦を下げる方向にある(例:Azure側のエージェント基盤で接続を“ツール”として扱える統合)

AIが逆風になり得る点(一般化のリスク)

AI対応が当たり前になるほど、「統合していて便利」という差別化は一般化しやすく、比較軸が運用の簡便性とコストに寄りやすくなります。その結果、クラウド標準機能や周辺ツールとの競争が厳しくなるリスクが残ります。

リーダーシップと文化:CEO交代は“継続”を掲げつつ、実行の規律が問われる局面

CEO交代(重要イベント)

MongoDBは2025年11月10日付でCEO交代を発表しています。Dev IttycheriaがCEOを退き、Chirantan “CJ” Desaiが新CEOに就任しました。Ittycheriaは取締役として残り、一定期間アドバイザーとして移行を支える形です。会社の説明では、方向転換というより長期戦略の継続性を担保しつつ次の成長局面に適したリーダーへバトンを渡す意図とされています。

前CEOの文脈:統合による複雑性削減

前CEOは、DB+検索+意味検索といった「統合」を、顧客の複雑性コストを下げる文脈で語る傾向が強く、AIについても過度に煽りすぎない距離感が観測されています。

新CEOの文脈:顧客密着・カテゴリ定義型プロダクト・スケール実行

新CEOの公的コメントは、顧客に近いこと、カテゴリを定義する製品、スケールして実行することを強調し、さらに「長期で持続的・収益的な成長」への言及もあります。就任直後のため、優先順位の線引きが実務にどう落ちるかは今後の観測事項です。

文化面の観測ポイント(長期投資家との相性)

  • ポジティブになり得る点:CEO交代でも前CEOが残り、急激な方向転換リスクを抑えやすい設計
  • 注意点:統合戦略は守備範囲が広がるほど優先順位の衝突が増え、実行力が問われる
  • 移行期リスク:CEO交代直後は意思決定テンポや評価軸が変わり得るため、「顧客密着」が取捨選択にどう反映されるかが重要

顧客の評価点と不満点(採用が広がる“理由”と“摩擦”)

顧客が評価する点(Top3)

  • 開発スピードと変更耐性(スキーマ変更・機能追加に追随しやすい)
  • 運用負担の軽減(Atlasで管理・スケール・可用性の面倒を減らせる)
  • DBだけで終わらない統合(検索・ベクター検索など、アプリ要件に寄せた拡張)

顧客が不満に感じる点(Top3)

  • コストの予測の難しさ(利用量課金、データ処理・転送など複合要因で変動)
  • 「何でもできる」反面の設計・運用の難しさ(最適設計には知識が要る)
  • 既存DBや特定クラウドDBと比較して、置き換え理由の説明が必要(導入摩擦になり得る)

Two-minute Drill(長期投資家向け要約):この企業をどう理解して追うか

  • MongoDBの本質は、アプリの「運用データの置き場」を、開発体験と運用体験込みで提供し、利用拡大が売上に連動しやすい点にある(Atlas中心)。
  • 長期では売上成長(FYで10年CAGR +46.3%)が強い一方、EPSは赤字が続き、ROEも最新FYで-4.64%と、利益の型がまだ定まっていない。
  • 短期(TTM)では売上は+20.9%成長するが、5年平均より減速しており、EPSは赤字で前年同期比も悪化する一方、FCFは+139.6%と強く「ねじれ」がある。
  • 財務は流動比率5.20・現金比率4.16で手元は厚いが、利払い余力は-15.26と利益面の強さはまだ弱い;「資金繰りの安心」と「収益性の未完成」が同居する。
  • 競争はDB同士の機能勝負だけでなく、クラウド標準の互換APIとオープン標準化がスイッチングコストを下げ得る構造との戦いで、差別化は総コスト(運用・ガバナンス・コスト予測)に寄りやすい。
  • AI時代は追い風になり得る(AIが業務データへ到達する基盤側)が、AI機能の一般化はクラウド標準機能との比較を強め、コストと導入簡便性が主戦場化し得る。

AIと一緒に深掘りするための質問例

  • MongoDBはTTMでFCFが3.55億ドルと強い一方、純利益(TTM)が-0.71億ドルで赤字だが、この差はどの費用項目(販売費、研究開発、株式報酬など)によって生じている可能性が高いかを、一般的なSaaS会計の観点で分解して説明してほしい。
  • Atlasの従量課金モデルにおいて、売上成長率が5年平均(FY CAGR +36.6%)からTTM YoY +20.9%へ減速している要因を、新規獲得・既存顧客の利用量増・顧客のコスト最適化の3つに分けて、確認すべきKPIを提案してほしい。
  • 検索・ベクター検索をMongoDBに統合する戦略は、顧客の「統合コスト削減」に本当に効くのかを検証するために、運用面(監視、バックアップ、権限、障害対応)とコスト面で比較すべき観点を整理してほしい。
  • MongoDB互換API(AWS DocumentDB、Firestore互換、Linux Foundation配下DocumentDBなど)がスイッチングコストを下げるリスクについて、どの機能領域(集計、インデックス、運用機能)が埋まると“移植が現実的”になるのか、段階分けして評価してほしい。
  • Net Debt / EBITDAが最新FYで23.83と過去レンジを上抜けしているが、分母EBITDAの小ささによる見え方の悪化を踏まえ、投資家が追加で確認すべき財務指標(現金、満期、利率、転換社債の有無など)を一般論として挙げてほしい。

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