黒崎播磨(5352)—「炉を止めない」耐火物×工事×改善で入り込む、堅実成長+循環のハイブリッド

この記事の要点(1分で読める版)

  • 黒崎播磨(5352)は、高温設備を止めないための耐火物と施工・保全・改善を一体で提供し、顧客操業に入り込んで稼ぐ企業。
  • 主要な収益源は耐火物販売と工事・エンジニアリングで、先端セラミックスは利益の質を補強し得る柱候補として位置づく。
  • 長期では売上が年5%前後で増え、純利益率が約1.5%(2015年度)から約7.0%(2025年度)へ改善して利益・EPSが伸びた一方、フリーキャッシュフローは年度で振れがある。
  • 主なリスクは需要(操業)サイクル依存と、現場実装力(安全・品質・工期・供給)が摩耗して差別化が薄れることにある。
  • 特に注視すべき変数は、施工込み案件の維持、工期遵守や品質トラブルなど運用品質の先行指標、海外(需要地)での開発・供給・施工の一体運用の進捗、利益とキャッシュの整合にある。

※ 本レポートは 2026-02-08 時点のデータに基づいて作成されています。

DDI 現在地

  • 企業タイプ:Stalwart中心・Cyclical要素あり
  • 成長モメンタム(TTM):Decelerating
  • EPS成長率(TTM YoY):+39.9%(TTM)
  • 評価水準(PER):自社5年・10年レンジ上抜け(TTM、株価基準日2026-02-06)
  • PEG(TTM):自社5年・10年レンジ内(TTM、株価基準日2026-02-06)
  • 最大の監視点:需要(操業)サイクル依存
  • 最大の監視点:現場実装力の劣化(安全・品質・工期・供給)

この会社は何をしている?(中学生向けに)

黒崎播磨は、ひと言で言うと「高温の工場(炉)の内側を守る“耐熱の材料”と、その貼り替え工事までまとめて支える会社」です。製鉄所やセメント工場などの炉は、とても高温で動き続けます。炉の内張りが傷むと、生産が止まってしまい大損害になり得ます。だから顧客は「炉を止めない」ために、熱に強い材料と、確実な施工・保全を必要とします。

提供しているもの(4本柱)

  • 耐火物:炉の内側に貼る“熱に強い壁材”を製造・販売(製鉄、セメント、非鉄などの高温工程向け)。標準品だけでなく、設備ごとの条件に合わせた「合わせ込み」が価値になりやすい。
  • 耐火物エンジニアリング:材料を「納める」だけでなく、設計・図面・金型・施工立ち会い・改善反映まで行い、寿命やトラブル率を左右する“使いこなし”を支える。
  • ファーネス(工業炉):炉の建設や整備、補修工事を請け負う。耐火物とセットになりやすく、「材料+工事」で一体提供できる。
  • セラミックス:先端産業(半導体製造装置や電子部品など)向けの高機能部材。景気の波はあり得るが、うまく伸びると高付加価値の柱候補になり得る。

どうやって儲かる?(収益モデルを分解)

収益は大きく「耐火物の販売代金」+「設計・図面・金型など技術サービスの対価」+「炉の工事・整備の対価」+「先端セラミックス部材の販売代金」の足し算です。耐火物は消耗品で交換・補修が継続的に起きやすい一方、寿命や交換の確実性が重要なので、設計・施工・改善を抱き合わせられるほど“現場の相棒”として関係が続きやすくなります。

なぜ選ばれる?勝ち筋は「材料」ではなく「止めない」

耐火物は地味に見えても「壊れたら工場が止まる」ミッションクリティカル領域です。顧客が欲しいのは、単価の安さだけではなく「操業停止リスクを下げる安心感」「計画停止の短い時間内で確実に工事を終える工程力」「次回の寿命を延ばす改善」です。

黒崎播磨は、材料に加えて設計・施工・改善までを束ね、顧客の操業に深く入り込みやすい構造を持ちます。結論として、この会社の価値の中心は「高温プロセスを止めない」現場実装力にあります。

例え話(1つだけ)

黒崎播磨は「巨大なかまどの内側に貼る“耐熱タイル”を作り、その貼り方や交換工事まで面倒を見る会社」です。タイルが弱いと、かまどが壊れて料理ができなくなるように、耐火物が弱いと工場が止まってしまいます。止めたくないから、信頼できる会社が選ばれます。

将来の方向性:次の柱になり得る取り組み

足元の主役が耐火物・工事であることは変わりません。ただし中長期で「競争力」や「利益の作り方」を変え得る候補は、材料記事の中に明確にあります。

1)海外(需要地)での研究開発体制強化

インドで耐火物の研究開発体制を拡充し、日本国内と合わせた2拠点で開発を進める動きが報じられています。需要地に近い場所で顧客の困りごとを掴み、改良スピードを上げ、採用につなげる狙いです。海外で「現地の条件に合わせて開発→供給→施工→改善」の型を作れれば、成長の上限が広がります。

2)先端セラミックスの拡大(もう一つの柱)

半導体製造装置や電子部品の世界は投資の波がある一方、要求仕様が上がるほど高機能部材の必要性が増えやすい分野です。黒崎播磨のセラミックスは、高温材料の知見ともつながりがあり、育てば会社全体の利益の質を補強する可能性があります(現状は主役かどうかとは別問題として、柱候補として整理しておく領域です)。

3)設計データとノウハウの資産化(内部強化だが効く)

年間の図面、設計、施工フィードバックなどの現場データが蓄積されるほど、提案の精度や再現性は上がりやすいと整理できます。将来的に設計の標準化・自動化(設計生産性の向上)が進むと、同じ人数でもより多くの案件を回せるようになり、利益体質にも影響し得ます。

直近の変化点:海外R&Dの拡張と、資本関係の大きな動き

事業面の変化としては、インドでのR&D拡充が「販売だけでなく開発体制もグローバル化」していく動きです。もう一つ、環境変化として大きいのが、日本製鉄による完全子会社化を目的としたTOBが話題になっている点です。これは“事業の説明”というより、今後の意思決定・投資・顧客対応の一体化に影響し得る変化点として押さえておく必要があります。

長期ファンダメンタルズ:売上は中速、利益は改善で伸びた

黒崎播磨の長期(10年・5年)を見ると、売上は年率約5%前後で増えてきました。2015年度の約1,104億円が、2025年度には約1,779億円まで拡大しています。一方で利益は、2015年度の純利益約16億円から2025年度約125億円へと大きく伸び、売上以上に利益が伸びた10年でした。

EPS成長の源泉:数量より「採算改善」

1株利益の年平均成長率は10年で約22.9%、5年で約14.2%と、売上(10年約4.9%、5年約5.3%)を上回っています。材料記事の整理通り、これは売上数量の急拡大というより、純利益率が2015年度約1.5%→2025年度約7.0%へ段階的に上がってきたことが効いています。発行株式数は大きくは変わらず、わずかに増加方向の年があるため、EPS成長は主に採算改善で説明されます。

ROE:低位から切り上がったが、凹凸はある

ROEは2015年度約3.5%から、近年は10%前後〜10%台前半へ基調が切り上がり、2025年度は約12.3%です。ただし2019年度約14.0%のような高い年もあれば、2021年度約6.8%のように低下する年もあり、素材産業の操業に連動しやすい“循環の凹凸”が混在します。

フリーキャッシュフロー:年度でプラスとマイナスが混在

フリーキャッシュフロー(年度ベース)は、2019年度約+80億円、2023年度約-35億円、2024年度約+101億円、2025年度約-12億円と振れがあります。利益が伸びてきた一方で、キャッシュ創出は平準化しにくい体質である、という事実として押さえておくのが安全です。

リンチ分類:Stalwart(堅実成長)中心+Cyclical要素のハイブリッド

長期の数字から見る黒崎播磨は、急成長株(Fast Grower)というより、売上は中速で積み上げ、採算改善でEPSが伸びてきたタイプです。一方で顧客操業に連動する凹凸(売上の落ち込みやROEの上下)があり、循環性も内包します。したがって、本銘柄は「Stalwartを中心にCyclical要素を併せ持つハイブリッド型」が最も自然な整理です。

短期(TTM)の勢い:売上は鈍いがEPSは強い—型は維持されているか

直近12か月(TTM、2025-12-31時点)では、EPS前年同期比が+39.9%と強い一方、売上前年同期比は+0.9%とほぼ横ばいです。長期像が「売上中速・利益は採算改善で伸びる」だった点とは噛み合っており、分類は概ね維持と整理できます。

ただし、売上が横ばいなのに利益が大きく伸びる局面は、原材料・エネルギー・製品価格・操業条件などの“局面要因”で利益が振れやすい側面も同時に示します。これは矛盾ではなく、ハイブリッド型(堅実成長+循環)の説明として自然ですが、利益成長の再現性は論点として残ります。

成長モメンタム判定:Decelerating(減速)の意味合い

5年平均(FY、2020→2025)では売上年+5.3%、EPS年+14.2%でした。これに対し直近TTMは売上+0.9%で減速、EPS+39.9%で加速、フリーキャッシュフロー(TTM)は取得できず評価が難しい、という組み合わせです。結果として「需要面(売上)の加速が見えない」ため、総合モメンタムは減速に寄せて整理されています。

財務健全性(倒産リスク含む):重要だが、今回データでは“空白”が残る

投資家が最も気にする負債水準、利払い能力、短期流動性(流動比率・当座比率・現金比率など)について、今回の入力には四半期データとしての比率情報が含まれていません。そのため「借入で無理をしていないか」「キャッシュクッションが厚いか」を、比率の推移で検証できない制約があります。

代替的に言えるのは、利益は足元で伸びている一方、年度ベースのフリーキャッシュフローは振れがあるため、短期の安全性は本来、負債・流動性データ込みで再点検したくなるタイプ、という整理です。ここは結論を急がず、追加データが必要な領域として管理するのが適切です。

評価水準の現在地(自社ヒストリカルの中での位置)

ここでは市場平均や他社比較ではなく、「この会社自身の過去レンジの中で今がどこか」を6指標で整理します。FYとTTMが混在する指標は、見え方が違う場合があり得ますが、これは期間の違いによる見え方の差として扱います。

PER(TTM):過去5年・10年の通常レンジを小幅に上抜け

株価4,200円(2026-02-06)時点のPER(TTM)は約9.02倍です。過去5年の通常レンジ(20–80%)上限8.87倍を小幅に上回り、過去10年でも同様に上限を小幅に上回ります。直近2年の方向性は低下です。自社ヒストリカル基準では、足元は「直近数年の中では高め寄り」という位置づけになります。

PEG(TTM):過去5年・10年とも“ほぼ真ん中付近”

PEG(TTM)は0.23倍で、過去5年中央値0.23倍、過去10年中央値0.22倍と近く、5年・10年ともレンジ内です。直近2年の方向性は低下です。

ROE(FY):レンジ内だが上限寄り

ROE(2025年度、FY)は12.33%で、過去5年・10年の通常レンジ上限(12.55%)に近い位置です。自社ヒストリカル基準では高めゾーンにあります。

フリーキャッシュフローマージン(FY):レンジ内の下側寄り(2025年度はマイナス)

フリーキャッシュフローマージン(2025年度、FY)は-0.67%で、過去5年・10年の通常レンジ内ではあるものの下側寄りです。マイナスであること自体を異常とは断定せず、あくまで現在の状態として記録しておく論点です。

フリーキャッシュフロー利回り(TTM)・Net Debt / EBITDA:現時点の現在地が整理できない

フリーキャッシュフロー利回りは、過去分布(中央値やレンジ)はありますが、直近TTMのフリーキャッシュフローが取得できていないため、現在地(レンジ内外)も直近2年の方向も評価が難しい状況です。またNet Debt / EBITDAも必要データが取得できず、現在地も方向性も整理できません。投資判断上は重要指標ですが、今回は「空白は空白として」管理する必要があります。

配当・資本配分:配当は“主役”ではなく、利益と連動する補助線

直近の配当利回り(TTM)は約1.43%(株価4,200円、2026-02-06)で、過去5年平均約4.12%に比べて低い水準です。1株配当(TTM、2025-12-31時点)は60円で、利益(TTM EPS約465.5円)に対する配当の割合は約12.89%と軽めです。

配当の成長と変動:長期は伸び、直近1年は大きく低下

1株配当の年平均成長率は過去5年約8.45%、過去10年約14.87%と、長期では増配してきた履歴があります。一方で直近1年(TTM)の配当増減は約-42.86%と大きく低下しており、配当は単調増加ではありません。したがって、インカム主目的の投資家には優先度が上がりにくく、トータルリターン重視の投資家にとって「補助的な還元」として位置づけやすい、という整理になります。

配当の安全性:利益では見えるが、キャッシュでの裏取りは難しい

利益面では配当負担が軽めに見えますが、直近TTMのフリーキャッシュフローが取得できていないため、配当が現金創出でどれだけカバーされているかは定量評価できません。年度ベースではフリーキャッシュフローがプラスとマイナスを行き来しており(例:2024年度プラス、2025年度マイナス)、配当の持続性は本来キャッシュの振れも合わせて見たいタイプ、という論点が残ります。

自社株買いより配当中心に見える

発行株式数は長期で大きく減っておらず、自社株買いで株数を減らして還元するタイプには見えにくいデータです。株主還元の主軸は、大規模な自社株買いではなく、配当と内部留保・再投資の組み合わせとして観察されます。

キャッシュフローの読みどころ:利益と現金が一致しない年がある

黒崎播磨は、利益率が上がりEPSも伸びてきた一方で、フリーキャッシュフローは年度で振れます。これは設備投資や運転資本の増減などの影響を受けやすい可能性を示唆しますが、現時点では原因の断定はできません。

結論として、投資家は「利益の伸び」と「手元に残る現金」のズレが起き得る会社として、キャッシュの振れ方(投資なのか運転資本なのか採算なのか)を継続観察する構えが必要です。

顧客が評価する点/不満に感じる点(BtoB現場型のリアル)

顧客が評価しやすいTop3

  • 操業停止リスクを下げる安心感(寿命・安定性・トラブル時対応)。
  • 現場に合わせて設計・施工まで一体で面倒を見てくれること(切り替えが難しくなる)。
  • 改善提案が積み上がること(炉ごとの癖を学び、次回に反映できる)。

顧客が不満に感じやすいTop3

  • コストの見えにくさ・価格改定のストレス(原料・エネルギー・物流・施工人員の影響)。
  • 納期・工期の制約(止められる時間が短く工程が詰まりがちで、遅れると操業計画に跳ねる)。
  • 品質のばらつきへの警戒(わずかな差が寿命差になり得て、評価が急落しやすい)。

競争環境:標準品は価格、勝負どころは「施工・改善込み」の総合戦

競争の土俵は「材料性能」だけではなく、「現場実装(施工・保全・改善)」を含む総合力で決まりやすい業態です。したがって競争は二層構造になります。標準品寄りの領域は比較購買されやすく価格競争に寄りやすい一方、“止めない”領域(高付加価値品+施工+改善)は実績と信頼が参入障壁になりやすい、という整理です。

主要競合(役割の整理)

  • 品川リフラクトリーズ:国内の総合耐火物プレイヤー。施工・技術サービスまで一体提供の色が濃く、施工体制強化の動きもあり、同じ土俵でぶつかりやすい。
  • RHI Magnesita(グローバル):世界的耐火物サプライヤー。供給網・現地生産・統合による競争圧力を高め得る。
  • Vesuvius(グローバル):鉄鋼工程の一部領域で強く、技術者派遣を含む運用支援型で競合し得る。
  • Calderys(グローバル):鉄鋼以外の非鉄や鋳造なども含む耐火物ソリューションを掲げ、用途展開で接点ができやすい。
  • 低コスト輸入材・現地ローカルメーカー:標準品側で価格競争圧力になり得る。

投資家がモニタリングしたい競争KPI(先行指標)

  • 主要顧客での採用品目の質(標準品比率が上がっていないか、施工込み案件が維持できているか)。
  • 計画停止における工期遵守・手戻り・品質トラブル(運用品質の先行指標)。
  • 供給安定(重要原料・物流・協力会社稼働)と、海外での現地完結(現地生産・現地施工・品質保証)。
  • 競合の打ち手(施工体制のM&A、供給網最適化、価格攻勢)が、自社の得意領域に侵食していないか。

モート(参入障壁)は何か?耐久性はどこで決まるか

黒崎播磨のモートは、ネットワーク効果のような「使う人が増えるほど価値が増える」タイプでは限定的です。一方で、耐久性を作り得るのは、設備ごとの現場条件・寿命・交換履歴・施工条件などの学習の蓄積であり、データ優位性は強くなり得る“素地”があります。

モートの中心は、材料だけでなく施工・保全・改善まで含めた実績の蓄積と、顧客設備に紐づくノウハウです。反対にモートが薄いのは、汎用品・標準品、書類・見積・一般的提案といった均質化しやすい領域です。結論として、競争優位の耐久性は「現場遂行(安全・品質・工期)と改善ループ」を維持できるかで決まりやすい構造です。

AI時代の構造的位置:AIに置き換えられる側ではなく、AIで強化できる側

黒崎播磨の事業中心はAIそのものではなく、AIで強化できる現場実装型です。寿命予測、交換タイミング最適化、施工計画最適化、品質異常の早期検知、材料開発の探索などがAIの主戦場になりやすい一方で、価値の最終到達点は「現場で安全・品質・工期を守り切る」ことに残りやすい整理です。

AIが普及するほど、図面作成や一般的な報告書・提案などの情報処理は均質化し得ます。その結果、差がつく領域は「現場データの標準化と運用定着」および「現場遂行能力」へ収れんしやすい、という見取り図になります。完全子会社化の進展は、技術共有・人材確保・海外展開の統合で耐久性が増す方向があり得る一方、対外顧客からの見られ方の変化は別論点として残ります。

ストーリーの継続性:勝ち筋と最近の動きは整合しているか

この会社の成功ストーリーは一貫して「止めない」を現場で実装することです。海外(需要地)で研究開発体制を強める動きは、顧客の操業条件に合わせた改良と採用を加速し得るため、この成功ストーリーと整合的です。セラミックスの育成も、既存の“高温×素材”の技術資産を別市場へ展開する方向で、ストーリーの延長線上に置けます。

一方で、完全子会社化に向けたTOBという大きな環境変化は、意思決定・投資の一体化で強くなる可能性がある反面、グループ最適の過程で対外顧客との距離感(公平性の見られ方)や現場裁量・機動力が落ちると、「現場の相棒」ナラティブが薄れるリスクもあります。ここは“強化にも摩擦にもなり得る”両面の論点として持っておくべきです。

Invisible Fragility:一見強そうに見えるが、どこが崩れ得るか

ここは「今すぐ悪い」と決めつける章ではなく、構造上じわじわ効く“弱り方”を棚卸しします。とくにこのビジネスは、数字に出る前に現場の信頼が先に傷む性格があるため、論点を持っておく価値があります。

  • 顧客依存の偏り:素材産業の操業に連動するため、需要先の操業度合い・投資計画の影響を受けやすい。完全子会社化が進む場合、グループ内需要との結びつき強化と、対外顧客の見られ方変化が同時に起こり得る。
  • 価格競争・調達合理化:標準品寄りは価格比較に引き戻されやすく、「一体提供の価値」が定量で伝わらないと単価勝負になりやすい。
  • プロダクト差別化の摩耗:差別化の中核が人とプロセス(施工管理、改善サイクル)に寄るため、熟練者不足や品質低下は数字より先に信頼を削る。
  • サプライチェーン依存:原料市況・物流・外注体制の制約で供給や工期が乱れると、顧客の停止計画に間に合わず信頼毀損になり得る。
  • 組織文化の劣化:安全・品質・工期が価値そのもの。文化劣化は短期の売上に出にくい一方、事故・手戻り・クレーム・離職で遅れて効く。現場型で人員比重が大きい構造確認として、従業員数のセグメント内訳開示がある点は押さえどころ。
  • 収益性の反動:売上が伸びないのに利益だけ伸びる局面は、コスト・価格・ミックス条件が変わると反動が出やすい。加えてキャッシュは年度で振れるため、稼ぐ力と手元資金が別の動きをする可能性が残る。
  • 財務負担(利払い能力)の悪化:今回データだけでは利払い余力や負債推移を定量チェックできず、結論を出せない空白領域として残る。
  • 業界構造の変化:国内需要が伸びにくい局面では海外取り切りが重要になるが、海外は競合・人材・供給網・品質保証の難度も上がり、失敗すると利益率から痛みが出る可能性がある。

以上を踏まえると、最大の監視点は材料記事のDDIにある通り、「現場実装力の劣化」と、操業サイクル由来の需要変動です。

リーダー・文化・ガバナンス:現場型BtoBに必要な“運用品質”が軸

代表取締役社長は江川和宏氏(2025年6月時点)です。創業者については、今回の情報範囲では特定の個人名を確証できないため扱いません。

求められるリーダー像(性格診断ではなく、事業からの要請)

  • 安全・品質・工期を落とさない管理志向(現場の不確実性を前提に運用品質を守る)。
  • 標準品の価格競争に引き戻されないよう、寿命・停止時間・施工品質といった付加価値を守る設計志向。
  • 完全子会社化の移行期における説明責任と手続き順守(市場・株主・規制対応)。

文化として現れやすいもの

「止めない」を支えるため、施工→フィードバック→次回提案という改善サイクルが回りやすい文化になります。業界紙報道では、福利厚生・安全衛生の基盤整備、処遇改善、独身寮建設、教育施策、小集団活動による業務改善など、人への投資に注力している旨が記されています。現場型ビジネスの競争力の根っこ(安全・品質・改善)と整合する施策です。

従業員レビューで一般化されやすい語られ方(引用はせずパターン整理)

  • ポジティブ:責任範囲が明確で仕事の手触りがある/改善が標準に入っていく/安全や品質のルールが実務として根づきやすい。
  • ネガティブ:計画停止の窓が短く工期・人員ピークが出やすい/原料・物流・外注制約が現場にしわ寄せになりやすい/属人性が残ると育成・引継ぎがボトルネックになりやすい。

ガバナンスの大きな変化点(移行期の意味)

完全子会社化に向けたTOBの公表により、意思決定の重心が「単体最適」から「グループ最適」へ寄る可能性があります。JPXの監理銘柄(確認中)指定の公表もあり、この局面は上場企業の平時ではなく移行期です。また、公開買付けを前提に配当予想を無配へ修正する開示も出ており、資本政策のモードが切り替わった事実として押さえておく必要があります。

Two-minute Drill:長期投資で見るための骨格

  • 何の会社か:高温設備を止めないための耐火物と施工・保全・改善を一体で提供し、顧客操業の中に入り込む会社。
  • 長期の型:売上は中速(年5%前後)だが、利益率改善でEPSが伸びてきたStalwart寄り。顧客操業に連動する凹凸がありCyclical要素も内包。
  • 足元の焦点:TTMは売上+0.9%に対しEPS+39.9%で、需要加速ではなく採算主導の強さ。利益の再現性と、キャッシュ(TTM未取得・FYは振れあり)の整合を点検したい。
  • 競争力の源泉:材料単体ではなく、施工・供給・改善を含めた運用品質。ここが維持されるほどスイッチングコストが上がる。
  • 最大の監視点:需要(操業)サイクルと、現場実装力(安全・品質・工期・供給)の摩耗。完全子会社化が強化に働くか、対外顧客の見られ方の摩擦になるかも併せて追う。

AIと一緒に深掘りするための質問例

  • 黒崎播磨の「材料+工事+改善」一体提供が維持されているかを、開示情報(受注の質、施工込み比率、主要顧客動向)からどう推定できるか?
  • TTMで売上が横ばい(+0.9%)なのにEPSが大きく伸びた(+39.9%)背景を、価格改定・原価・ミックス・操業条件の観点で仮説分解すると何があり得るか?
  • 年度でフリーキャッシュフローが振れる(2024年度+101億円、2025年度-12億円)原因を、運転資本・投資・採算の3分解で確認するには、どの追加データが必要か?
  • 日本製鉄による完全子会社化が進む場合、対外顧客が「セカンドソース化」を進めるリスクをどう検知できるか?(失注だけでなく引合いの質の変化として)
  • 現場実装力の劣化(安全・品質・工期・供給)を、財務数字に出る前に捉える先行指標として何をウォッチすべきか?

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ここで言及される投資フレームワークや視点(例:ストーリー分析・競争優位性の解釈など)は、
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